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【545】天めざす豆の木と賢いリスの未来都市 [ビジネス]

 つい話題にしちゃった流れで、トンデモ技術の雰囲気は満々ながら、なかなか無碍にもできないでいるネタを語っておこう。
 宇宙エレベーターだ。テレビでも時折解説されているから、御存知の方も多いだろう。

 まずは細かいコト言わず空に向かって蔓を一本伸ばしていくと思いなさい。そんなのいくらもいかないうちに倒れて地面をのたくるだけじゃん、という指摘は正しいので、静止衛星から糸一本たらしてもらって先を引張り上げるとしようか。試す場所は、赤道上が何かと都合いいと思う。
 蔓にも重さがあるので、伸ばせば伸ばすほど静止衛星を引きずり降ろそうとする力は大きくなる。ここは衛星に上向き噴射をかけるなり、火星人や金星人に頼んで外からちょっと手を添えてもらうなりして、とにかく頑張って蔓を先に伸ばしてしまおう。すると。

 静止衛星は重力と遠心力が釣り合っていて、何の推進力ナシでも落ちてこない。
 この蔓の先の方も遠心力を受けるため、落ちてこようとするばかりではなくなってくるのだ。地球の赤道上から放射方向に一本、まっすぐ線が伸びている姿を想像していただきたい。
 静止衛星の高度は約3万6千キロで地球の直径の3倍程度だから、これより蔓を長く伸ばしてやり、先端部にかかる遠心力を蔓の張力にすれば、火星人も金星人もお役御免で消えてくれて結構だ。

 何故こんな馬鹿げたモデルを考えるのか。
 それは、宇宙への交通手段としてのロケットが、あまりにも非効率なためである。
 飛行機の場合、プロペラなりジェットなりの推進力気流を後方の大気に叩きつけ、同時に前方の大気に木ネジよろしく切り込んでいくことで前進する。だがロケットは、あっという間にロクな大気のない高さに到達してしまう。
 真空の宇宙にどれほど強力な噴射をかましたところで正真正銘の虚空に消えるばかり、何の手ごたえも返ってこない。つまりロケット本体に推進力が掛からないのだ。でもロケットは尻から火を噴いて飛んでいくよな。

 そう、ロケット噴射の火は、実はムチャクチャ重たいのである。
 荷運び用の台車に乗ってボーリングの球を投げたとすると、台車に乗った自分が後ろ向きに走るのは思い描けるだろう。この球が重いほど、そして球速が速いほど、自分も勢いよく後退する。
 要は、我が身の体重をちぎっては投げ、ちぎっては投げすることによりロケットは進むのだ。だからアポロ計画のサターン宇宙船は100メートルを超える高層ビルのような巨体で打ち上げられながら、帰ってくるのは先っちょの小さな円錐だけだし、スペースシャトルは自機よりもでっかい竜宮城のカメさんに背負われて打ち上げられ、カメさんは全部そこらに捨てて帰ってくる。その大方は落ちる途中、大気との摩擦で燃え尽きてオワリだ。
 これから荷を背負って元気に飛び上がりたいロケットのその大部分は、『ちぎって捨てるために、できるだけ重くしてある』という訳だ。あまりに悲しすぎるジレンマである。

 これは真空相手なので推進力が踏ん張れないというところに問題の本質がある。
 ならば、推進力が踏ん張れるモノ、というかすがるモノという雰囲気になっちゃうんだが、宇宙エレベーターでどうだ!という構想が回答になると。
 これはその通りで、ちょろっとしたブツを宇宙に持ち上げるたび、莫大な質量を地球から削り取って空中にばら撒く現状のダサさを見るに、ナニガシかそういう発想が欲しい。重力圏を振り切るまでの途中経路に物理的な梯子がかかり、空気や水道光熱に通信などもつながる意義の大きさを列挙してみていただきたい。

 さて真っ先に思い当たる問題は蔓の素材だが、炭素系複合素材ならば軽く頑丈で耐候性にも優れており、とりあえず地表面から静止衛星の先まで何とか持つのが実現可能と思われる。
 ただ火星人と金星人がいつ空いているのか判らないと上空側から持ってもらえず、蔓を上まで伸ばす工事が死ぬ程タイヘンなことになりそうだ。また大気圏内では時速百キロ単位の風にも叩かれ得るため、そこで受ける力や横方向の流され代なんかが、考える気の起こる範囲に収まってくれるかどうか怪しい。スペースデブリもヤだしなあ。

 そこでだ。
 前回の『空飛ぶ自動車』『物流ドローン』なる飛翔技術がイマイチ好きになれんぞというハナシ、これって計画的に、また縦横を組み合わせて蔓を張ってやれば、随分と省エネの軽量新交通になったりしないだろうか。
 電柱と架線を景観上の悪者にする議論は多く、確かに無計画に増設を繰り返されたその姿は美しいとは言い難いけれど、CADのワイヤーモデル風にデザインされた未来都市みたいになれる余地があるなら話は別だ。何しろ埋設架線は高額で、トラブル検知も修理もメンテナンスも難しく、地震では寸断されるし水没しやすい。
 幾何学的に張られた架線兼滑走ワイヤーを高速で伝い、ワイヤー交差位置で一旦停止しては滑走駆動装置がワイヤーを抱き換えて、忍者のように宅配をこなす新交通である。相互通信しながら最短ルートをはじき出すなんてのは人工知能の得意分野だろうから、自動運転技術はこういう作動環境で育てた方が、実現性が高く実用化・有益化も早いのではないか。

 既に気球を高く上げて、宇宙エレベーターのマシンを往復させるタイムトライアルレースは行われている。目的地を宇宙のもうちょっと手前にしとけば、今すぐ最適解が手に入るくらい研鑽された技術が競走しながら育っているのである。
 本命の宇宙エレベーターはまだ少々かかりそうだが、せっかく面白いことを思いついたのなら、現実にして紆余曲折の七転八倒を楽しまないともったいない。いろんな技術が想像力豊かに展開し迷うのはおおいに結構、でもその手で現実をつかむ目的意識だけは忘れて欲しくないのである。

 いま都心はどこへ行ってもメチャクチャな再開発工事が同時進行中だ。五輪を経てどんな未来を実現したいのかは全く見えず、ただ目前の利権行使で不採算な内輪カネ廻りのため、やってしまえる事を片っ端からやってしまっているだけでしかない。
 未来に起こる現実など意識から消え去り、どうでも良くなっているのである。哀れだ。

 ここで技術者までが現実への残距離を測るメジャーを失くしてしまっては、大風呂敷の拡げ方と見世物チャレンジ劇が盛り上がるばかりで、人間社会で協調し調和しながら作動する文化が消滅してしまうではないか。
 以上、最近の技術動向を見ての、理系思考のマインドに対するお小言でした。
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